東京?木場の東京都現代美術館で開催されている「東京アートミーティング トランスフォーメーション」展が面白い。何が面白いかというと、もちろん作品1つひとつも興味深いのだが、根底に流れるテーマ「変身─変容」が底知れぬ魅力を放っているからだ。
【拡大写真や他の紹介写真】
テレビや漫画のヒーロー、映画やアニメのお姫さまに「 ルイヴィトン 新作
変身」したいと思う願望は誰もが一度は持ったことがあるだろうし、念入りにパウダーをはたき、まつげをごっそり増量する女性たち(だけではない)や、戦闘服であるスーツに身を包むサラリーマンだって毎日変身しているといえる。年齢とともに体や心も変わっていくし、ちょっと食べ過ぎたら太る。人びとは、変身と変容を繰り返して日々生活しているのだ。 アグ
今回は、東京都現代美術館のチーフ?キュレーター長谷川祐子氏と人類学者の中沢新一氏が共同で展覧会を企画した。アートと人類学という多層的なアプローチから、「トランスフォーメーション」という主題で人間と動物との関係を探る。ヨーロッパ、アジア、アメリカなど15カ国から集結した21組のアーティストたちは、どんな「変身─変容」を見せてく シャネル 新作
れるのだろうか。いくつか抜粋して紹介したい。
今回のメインビジュアルにもなっているマシュー?バーニーの作品だ。レディー?ガガに影響を与えたとかビョークのパートナーだとか周辺情報ばかりが流布しているが、米国のコンテンポラリーアートを代表するアーティストの1人で、2005年には金沢の21世紀美術館で大規模な個展も行われた作家である。学
生時代に医学、美術、体育を修めたマシュー?バーニーは、一貫して「身体の変容」をテーマとしている。
展示されているのは、本邦初公開の「クレマスター3」。これは2002年に制作された「クレマスター」シリーズを締めくくる作品で、ニューヨークのクライスラービルとグッゲンハイム美術館を舞台に、ケルトの巨人神話、フリーメイソン、華やかなラ メイプル rmt
インダンス、ロックとさまざまな要素が複雑に絡み合う182分に及ぶ壮大なストーリー。映像、彫刻、写真という複数のメディアでマシュー?バーニーの最高に痛々しくも美しい世界が堪能できる。
一瞬ドキッとしてしまう感覚を与える彫刻は、パトリシア?ピッチニーニの作品「新生児」。ピッチニーニがテーマにしているのは、「人工物と生物、人間と動物
の境界」である。シリコンと人毛を使ったハイパーリアルな彫刻は、ほのかな体温までこちらに伝わってくるかのよう。これまで見たことのない姿かたちの彫刻は、想像上のものなのか、遺伝子操作によるフリークなのか。寝息まで聞こえてきそうな安らかな寝顔の新生児は、わたしたちに生命倫理や差別問題を無言で問いかける。
高木正勝氏の新作映像作
品「Ymene」。観客は4原色で世界を見る鳥の姿になり、世界のいろんな場所を飛び回り、その姿がメタモルフォーズして、海に還りまた空へと飛び立つ。その姿はリンカネーションを思わせる。映像を見ているといつの間にか自分の姿はどんどん記憶を遡り、母の羊水の中へと還っていき、さらに前へ前世なんかよりもっともっと前の人類や大地に刻まれた歴史がフラ
ッシュバックする。
高木正勝氏は、本作品についてこう語っている。
「この展覧会の話をいただいたときに、キュレーターの長谷川祐子さんには『鳥になってきなさい』といわれ、中沢新一さんには『幽体離脱してきなさい』といわれました(笑)。今回の作品では鳥の目線だったり、子どもの目線だったり『変容する側の目線』を意識して映像
を作っています。音は、いろいろ作ったんですが、今回も子守歌や赤ちゃんの声しかハマらなかった。それは、人が男や女、自然と人間という境界の概念を持つより前の無垢な音だからなのかなと。自分の作品は、まったく違う生き物に変身するというよりは自分自身に還っていく、そういう部分での変身を表現しているのだと思います」
また、及川潤耶氏
によるサウンドインスタレーションも非常に面白かった。彼は、子どもや動物、鳥、自身のリップノイズなどさまざまな声をサンプリングし、その構成を再度組み替えて変容させ、空間にちりばめる。及川氏は1983年生まれ、現在東京藝大大学院にて音響芸術を学びながら作品を発表する若き音響作家である。今後の活躍が非常に楽しみだ。12月18日(土)には、ホーメ
イ歌手/アーティストの山川冬樹氏とのサウンドパフォーマンスが予定されている。
写真家の石川直樹氏は、エベレスト登頂にアタックしたときの自分自身の体の変容について語る映像作品と、北極?南極で撮影したプリントを展示している。肉体的にも精神的にも極限状態に追い込まれたとき、人は何を思うのか。石川氏の体験に基づいた言葉と現場の映像
は、淡々とリアルに当時の状況を物語る。標高7000メートルを越えたときの心境についての言葉を紹介しよう。
「自分の意識が身体と分離するような感覚はありませんが、頂上付近では風の残像が見えたり視界に黒い靄がかかったりすることはあります。その症状は酸素ボンベを使うと消えるのですが、何らかの内的な変化は確かにあると思います」
本展では、アジア作家の台頭が目立つ。ジャガンナート?パンダ氏もその1人だ。インド在住のパンダ氏は、現代の都市に生きながらも伝統を大切に思い、過去と現在の都市の姿が融合する姿を描く。
バールティ?ケール氏もインドの作家である。この作品では都会的な女性がショッピングバッグを抱えて歩く姿が彫刻になっているが、その顔は何
者かに憑かれたような表情を浮かべており、欲にまみれた妖怪のようにも見える。そのほか、彼女はビンディを用いた壮大な絵画作品や女性の体の一部が変容する写真シリーズなどを展示している。
そのほか、パキスタンのシャジア?シカンダー氏、カンヌ映画祭でパルムドールを獲得した映像作家アピチャッポン?ウィーラセタクン氏などがアジア系作家で
ある。ヨーロッパ系の作家とアジア系の作家における「変身─変容」のとらえ方の違いという点で作品を見てみるのも面白いだろう。日本やアジア圏では、人間と動物の距離が近く、日常感覚に近いところで「変身─変容」をとらえている、と感じられた。
美しい女の子のコスプレ映像と写真と機械が並んでいる、と甘い罠に引っ掛かった人も多いと思う。
スプツニ子!氏の作品だ。一部、ニコニコ動画やYouTubeなどで理系美少女アーティストとして話題にはなっていたが、本格的に作品を展示するのは今回が初めてとなる。作品はコンセプト写真と映像作品、デバイスをセットにしたインスタレーションで、彼女は、作詞?作曲、デバイスの設計からプログラミング、演者まですべて自分自身で行なう。スプツニ子!氏がテ
ーマにしているのは、ジェンダー、セクシャリティやテクノロジー、コミュニケーションについて。
例えば「寿司ボーグ☆ユカリ」は、美少女ロボットや女性型アンドロイドを開発する研究者たちが開発した接客ロボットが、回転寿司マシンを改造し反乱を起こすというストーリー。腰にまとっている回転寿司マシンは、くるくる回りながら鋭い牙をむく。
映像でバッサバッサとサラリーマンたちがメッタ切りにされるシーンは、残酷というよりはむしろ痛快である。
スプツニ子!氏は、両親ともに数学者という家庭に生まれ、飛び級して20歳でロンドンの大学で数学を修めたという頭脳の持ち主。フリーのプログラマーとして働いた時に「テクノロジーを使いこなせることで、女の子でも自由になれたし力を得
ることができる」ことを感じたという。そして、ロンドンのロイヤルカレッジオブアートでアートを学び、卒業制作で本展の3作品を作り上げた。そして、2011年にはMoMAでも作品展示予定という現代アート界期待の新星なのだ。最高にポップでシニカルなスプ子ワールド、ぜひチェックしてほしい。
ほかに、動物のかぶりものをしてシャーマンとなり、人
びとの悩みを解決するというパフォーマンスをするマーカス?コーツ氏の思わず笑ってしまう映像作品や、自身の体の一部が獣化した彫刻をずらりと並べたヤン?ファーブル氏、機械と人が融合する何とも美しい彫刻作品を展示したイ?ブル氏の作品などを見ると、トランスフォーメーションというのは人間が誰しも考える願望なのに表現手法がこうも違うのかということ
を思い知らされる。
また、少し違ったアプローチだったのは、ペンやクリップや発泡スチロールといった大量生産品を使ったインスタレーションで知られるサラ?ジー氏。会場の廊下の窓と手すりの隙間という細長い空間を使った新作を展示、日用品が繋がり、互いに作用し合いながら連なる風景は、見ていると小さな街のようで圧巻であった。
最後に、今回共同企画者となった人類学者の中沢新一氏が「トランスフォーメーション」について語った言葉を引用する。
「現代は、人の感覚や想像力、身体の中の活動がいろんなところで管理されたりブロックされたりしてほかの領域に越境できない。自由が阻害され拘束されている状態といえる。技術革新が進めば進むほど、わたしたちはこのブロック
の存在というのを意識させられる。このブロックを乗り越えていくということは、人間の体の在り方、環境と人間の関係性、経済と人間との関係性を組み換えることです。今回は、人間の感覚をブロックするものを『変容し壊す』ことを、アートの場で実践しているアーティストたちを招いています。トランスフォーメーションとは、言葉をいい換えると、これからの人
間が探っていかなければならない自由はどういう形になるのかということなのです」(中沢新一氏、記者会見時のコメントより)
太古の時代から人びとを魅了してきた、変身─変容とは。そして、現代人をとりまくさまざまな問題や境界をリセットし、自由になるということはどういうことなのか。いろんな変容の姿を見て考えてみたい。「変わるわよ」。
2011年1月30日まで。【上條桂子,エキサイトイズム】
●東京アートミーティング トランスフォーメーション
開催中?2011年1月30日(日)
東京都現代美術館
月休、ただし1/3、10は開館、12/29?1/1、1/11は休館
Open.10:00?18:00(入場は閉館の30分前まで)
一般1300円
Copyright (C) 1997-2010 Excite Japan Co.,Ltd. All Rights
Reserved.
【関連記事】
プロの写真家が行う国際貢献、17日からチャリティー展
ブルガリのシルバーリングで世界に愛を
iPadに「デジタルクラフトの世界。」を無料配信開始
「教えて!ビッグマックの食べ方」キャンペーン、26日まで200円
表参道に「カカオサンパカ」初のカフェ併設2号店
引用元:arad rmt
0 件のコメント:
コメントを投稿